Magneti Marelli ECU Diagnostic Software

IAWDiag
日本語ガイド

Ducati・Moto Guzzi・Aprilia等のMagneti Marelli ECUに接続し、診断・マップ読み書き・各種リセットを行うための無償ソフトウェアの解説ページです。

対象:中級者(基本的なPC操作とバイクメンテができる方)
対応OS:Windows
ソフトウェア:無償
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IAWDiagとは

IAWDiagは、Magneti Marelli製ECUを搭載したバイクの診断・設定変更を行うための無償のオープンソースソフトウェアです。元々Moto Guzzi向けに開発されたGuzziDiagの汎用版として配布されており、DucatiやApriliaなど幅広い車種に対応しています。

🔍
故障診断
ECUに記録されたフォルトコードを読み出し・消去する
📥
マップ読み出し
現在のECUマップをBINファイルとしてバックアップ
📤
マップ書き込み
新しいBINファイルをECUへフラッシュ
⚙️
TPSリセット
スロットルポジションセンサーの基準値をリセット
🔧
COトリム
アイドル時の空燃比を微調整(対応ECUのみ)
🔔
サービスリセット
整備インジケーターのリセット
📊
リアルタイム表示
水温・TPS・回転数などをリアルタイムでモニタリング
🚫
イモビオフ
イモビライザーの無効化(TunerProと併用)
ℹ️
GuzziDiagとの違い:GuzziDiagはMoto Guzziのモデル名でバイクを選択できますが、IAWDiagはECU型番で選択します。機能はほぼ同一です。DucatiユーザーはIAWDiagを使用します。
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対応ECU一覧(Ducati)

Ducatiで使用されているMagneti Marelli ECUの主な型番です。車種とECU型番の対応を確認してからソフトウェアを選択してください。

ECU型番 主な対応車種 Reader/Writer
5AM Monster 1000/S2R/S4R/S4RS、Multistrada 1000/1100、Hypermotard 1100、ST3、748/998系 IAW5xReader / IAW5xWriter
5AMB Monster 696/796/1100 EVO、Hypermotard 796 IAW5xReader / IAW5xWriter
15M / 15RC Monster 400/600/620/800、SS800/1000 IAW15xReader / IAW15xWriter
7SM (Moto Guzzi California 1400等) IAW7SMReader / IAW7SMWriter
⚠️
ECU型番の確認方法:サービスマニュアルで確認するか、ECU本体のシールに印字されている型番を直接確認してください。誤ったReader/Writerを使用するとECUを破損する恐れがあります。
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必要なもの

ソフトウェア(すべて無償)
  • IAWDiag本体von-der-salierburg.de からダウンロード
  • ECU対応のReader/Writer:同サイトから車種に合ったものをダウンロード(例:IAW5xReader、IAW5xWriter)
  • FTDIドライバー:付属CDのドライバーは使用せず、こちらからダウンロードしてインストール
ハードウェア(購入が必要)
  • OBD2 KKL 16ピン→USB変換ケーブル(FTDIチップ搭載品)
  • Fiat 3ピン→16ピン変換アダプター(診断コネクター接続用)

上記2点のセットが Lonelec(lonelec.co.uk) で入手できます。品質が保証されており、最も推奨されている購入先です。Amazonや中国製の安価なケーブルはFTDIチップが偽造品の場合があり、正常に動作しないことがあります。

🚨
重要:バッテリーへの接続の極性を絶対に間違えないこと。逆接するとECUが破損します。接続前に必ず赤=プラス、黒=マイナスを確認してください。
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インストール手順

  1. FTDIドライバーをインストール

    ケーブルに付属のCDのドライバーは使用しないこと。griso.orgで配布されているドライバー(CDM21228_Setup.zip)を使用する。インストール後、PCを再起動する。

  2. IAWDiag本体を解凍

    ダウンロードしたzipファイルを任意のフォルダに解凍する。インストーラーは不要でそのまま実行できる。

  3. Reader / Writer を解凍

    ECUに対応したReader(例:IAW5xReader)とWriter(例:IAW5xWriter)も同様に解凍する。IAWDiag本体とは別のフォルダに保存しておくとわかりやすい。

  4. COMポートを確認

    ケーブルをPCに接続し、デバイスマネージャーで割り当てられたCOMポート番号を確認しておく(例:COM4)。この番号は後で使用する。

    デバイスマネージャー → ポート(COMとLPT) → USB Serial Port (COM**)
⚠️
アンチウイルスの警告について:IAWDiagはWindowsのセキュリティソフトやブラウザから「危険なファイル」として警告されることがありますが、これは誤検知です。長年のユーザーが使用しており問題は報告されていません。ただし公式配布元(von-der-salierburg.de)以外からダウンロードしないこと。
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接続手順

  1. ケーブルを接続する

    OBD2ケーブルと3ピンアダプターの16ピンコネクター同士を接続する。次に3ピン側をバイクの診断コネクターに接続する。Ducatiの診断コネクターはECU近く(シート下前方)にある。

  2. バッテリーに接続する

    3ピンケーブルのクリップをバッテリー端子に接続する。赤=プラス、黒=マイナス。OBD2ケーブルのLEDが点灯すれば正常に電源が供給されている。

  3. USBをPCに接続する

    OBD2ケーブルのUSB端子をPCに接続する。

  4. IAWDiagの設定を行う(初回のみ)

    File Preferences を開き、COMポートとECU型番を設定する。設定後、ダイアログを閉じる。

  5. ECUに接続する

    File Connect をクリック。指示に従いイグニッションキーをONにする(エンジンは始動しない)。接続が成功すると各種センサー値がリアルタイムで表示される。

ℹ️
重要:IAWDiag、Reader、Writerは同時に1つしか起動できません。複数のプログラムを同時に開くとCOMポートの競合が発生します。作業の目的に合わせて1つだけ起動してください。
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マップの読み出し(バックアップ)

書き込み作業を行う前に、必ず現在のマップをバックアップしてください。これは最重要の手順です。

  1. Readerを起動する

    IAWDiag本体ではなく、ECUに対応したReader(例:IAW5xReader)を起動する。

  2. COMポートを選択する

    ドロップダウンから正しいCOMポートを選択する。複数ある場合は最も番号が大きいものを試す。

  3. 「Read」をクリックする

    保存先フォルダとファイル名を指定してSaveをクリック。ファイル名は日時を含めてわかりやすくしておく(例:multistrada1100_original_20240101.bin)。

  4. イグニッションをONにする

    指示が出たらイグニッションキーをONにする。読み出しが開始される。ECUの種類により数分〜30分程度かかる。

  5. 完了後キーをOFFにする

    読み出し完了のメッセージが表示されたらキーをOFFにする。BINファイルが保存されていることを確認する。

🚨
バックアップしたBINファイルは絶対に書き換えずに保管してください。問題発生時に元の状態に戻すための唯一の手段です。
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マップの書き込み(フラッシュ)

🚨
書き込み中は絶対にケーブルを抜いたりキーをOFFにしないこと。ECUへの書き込み中に電源が切れるとECUが破損します(文鎮化)。バッテリーが十分に充電されていることを確認してから作業してください。
  1. Writerを起動する

    ECUに対応したWriter(例:IAW5xWriter)を起動する。IAWDiag本体やReaderは起動しないこと。

  2. BINファイルを選択する

    「…」ボタンをクリックして書き込むBINファイルを選択し「Load」をクリック。ファイルが表示されない場合は誤ったWriterを使用している可能性がある。

  3. チェックサムを確認する

    画面右下に表示されるチェックサム(数値)をマップ提供元から入手した値と照合する。一致しない場合は書き込まないこと。

  4. 「Write」をクリックして書き込む

    指示に従いイグニッションをONにする。アップロード(uploading)→プログラミング(programming)の順に進む(ECUにより数分〜15分程度かかる)。完了メッセージが出たらOKをクリックしてキーをOFFにする。

ℹ️
書き込み完了後は必ずTPSリセットを行ってください。行わないと低回転域でのアイドルや応答が不安定になる場合があります。
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Actors(アクチュエーター操作)

IAWDiagをECUに接続した状態で View Actors を開くと、各種アクチュエーター操作・リセット機能にアクセスできます。

機能名 内容 エンジン状態
TPS Reset スロットルポジションセンサーの基準値リセット 停止
Reset Autolearning Parameters ECUの燃料トリム学習値をリセット 停止
Handle Self Learning スロットルハンドルセンサーの再学習(7SM系のみ) 停止
Throttle Self Learning スロットルボディの再学習(MIUG3・7SM系) 停止
Fans Test 冷却ファンの動作確認 停止
Injectors Test インジェクターの動作確認(クリック音が聞こえる) 停止
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TPSリセット手順

マップ書き込み後やスロットルボディ交換後に必要な作業です。

⚠️
非線形TPS(ノンリニアタイプ)には実施しないこと。非線形タイプのTPSは電子的なリセットができず、ボルトメーターを使用した手動調整が必要です。TPSに直接印字されている型番で確認してください。
  1. ECUに接続した状態でActorsを開く

    View Actors を開く。エンジンは停止した状態で行う。

  2. ドロップダウンから「TPS Reset」を選択してStartをクリック

    「Engine Off」欄のドロップダウンから「TPS Reset」を選択し「Start」をクリック。完了ダイアログが表示されたらOKをクリック。

  3. スロットルを少し開いて戻す

    スロットルを少し開いて完全に戻す。

  4. もう一度TPS Resetを実行する

    同じ手順でもう一度TPS Resetを実行する。二回行うことでより安定した結果が得られる。

TPS正常値の目安(Ducati)

Monster 1000/1100 / Hypermotard 1100:約 4.6 〜 4.8

リセット後にIAWDiag画面のTPS表示値がこの範囲に収まっていることを確認してください。大きくずれている場合はスロットルボディやTPSセンサーに問題がある可能性があります。

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COトリム調整

COトリムは5AMおよび15RC ECUのみ対応しています。新しいマップを書き込んだ後や、アイドルが不安定な場合に微調整します。範囲は-128〜+128です。

  1. エンジンを温める

    エンジン温度が60℃以上になるまで暖機する。IAWDiagを接続した状態でモニタリングできる。

  2. キルスイッチを押してからCO Trimを開く

    60℃に達したらキルスイッチを押す(エンジン停止)。View CO Trim を選択。

  3. エンジンを始動して調整する

    指示に従いエンジンを始動。「+」「-」ボタンで値を調整する。各調整後は約15〜20秒待ち「Finish」ボタンを押して反映させてから効果を確認する。

COトリム調整の目安

アイドルが低い・ガクガクする → プラス方向に調整(+3〜+5から試す)

未燃焼ガスの臭いが強い → マイナス方向に調整(-5から試す)

±10を超える調整が必要な場合は、マップが車両の仕様に合っていないか、TPS未リセット・スロットル未学習などの機械的な問題が疑われます。

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サービスインジケーターのリセット

整備後にダッシュボードに表示される「SERVICE」インジケーターをリセットする手順です。

  1. ECUに接続する

    通常の接続手順でIAWDiagをECUに接続する。

  2. Actorsからリセットを実行する

    View Actors を開き、ドロップダウンから「Reset Service Indicator」または「Service Reset」を選択して「Start」をクリック。

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故障コード(DTC)の読み出し・消去

IAWDiagでは、ECUに記録された故障コード(DTC:Diagnostic Trouble Code)の読み出しと消去が可能です。チェックエンジンランプが点灯した場合や、整備後のコード消去に使用します。

⚠️
マップ読み出し前に必ず故障コードを確認すること。マップの読み出し(Read)を実行すると、ECUに保存されている故障コードが消去されてしまいます。診断目的でコードを確認したい場合は、マップ読み出しより先に行ってください。

故障コードの読み出し手順

  1. ECUに接続した状態でErrorsを開く

    通常の接続手順でIAWDiagをECUに接続する。接続後、View Errors を選択する。

  2. 故障コードを確認する

    ウィンドウ上部に検出された故障コードが表示される。コードが表示されない場合は現在エラーなしの状態。表示された場合は内容をメモまたはスクリーンショットで記録しておく。

故障コードの消去手順

  1. Actorsから消去を実行する

    View Actors を開き、ドロップダウンから Clear Stored Data を選択して「Start」をクリックし、指示に従って操作する。

  2. 消去後に再度確認する

    消去後、再度 View Errors を開いてコードが消えていることを確認する。根本原因が解決されていない場合はコードが再発生する。

P0611(Saved Data File)について

一部のECU(Aprilia RSV4等)では P0611 コードが通常の消去操作では消えない場合があります。

この場合はActorsの Stored Data Download を先に実行してからClear Stored Dataを実行することで消去できます。IAWDiag V0.48以降で対応しています。

ℹ️
コードが繰り返し発生する場合:根本的な原因(センサー不良・配線不良・バッテリー劣化等)が解決されていない可能性があります。コードを消去しても再点灯する場合は機械的な点検が必要です。
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トラブルシューティング

接続できない・タイムアウトになる
  • COMポートの番号が正しいか確認する(デバイスマネージャーで再確認)
  • FTDIドライバーが正しくインストールされているか確認する
  • OBD2ケーブルのLEDが点灯しているか確認する(消灯している場合はバッテリー接続の極性を確認)
  • Reader/WriterとIAWDiagが同時に起動していないか確認する
  • バイクの診断コネクターへの接続を確認する
ウイルス警告が出る

セキュリティソフトが誤検知することがありますが、公式配布元(von-der-salierburg.de)からダウンロードしたファイルであれば問題ありません。セキュリティソフトの例外設定に追加するか、一時的に無効にして作業してください。

書き込み後にSERVICE警告が表示される

7SM系ECUでHandle/Throttle Self Learningを行った後に表示される場合があります。Handle Self Learningを再度実行し、「Finish」ダイアログ後にキーをOFFにせずそのままThrottle Self Learningを続けて実行することで解消します。

BINファイルが選択できない

Writerの選択が誤っている可能性があります。例えば5AM用のBINファイルは5AM用のWriterでしか認識されません。ECU型番とWriterの組み合わせを再確認してください。